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昔を知る女

先週、東京に住んでいる高校時代の友達と本当に久しぶりに会ってきた。

地元にいる友達とは帰省のたびに遊んだりするのに、東京に住んでいる同士の方が意外と会えなかったりするのは地方出身あるあるなのか。

お互いに結婚や出産と忙しく10年近く会えてなかったけれど、会った瞬間に昔の関係に戻れるのが地元の友達だ。

子どものお迎えのタイムリミットまで3時間。
その間にこの10年に起こったことを伝えたいし、高校時代の笑い話も入れたくてお互い息つく間もなく話す。笑って泣いて感心した、本当に濃い3時間。それに、気になっていたあのことも話せた。

*

友達に会う2日前。

マムハイブのメンバーで、中学からの付き合いであるはちがに「明後日Rちゃんに会ってくるよ」と話すと、はちがから「Rちゃんといえば」と高校時代の話が始まった。

女のわたしから見ても守りたくなるようなかわいらしいRちゃん。
口汚いわたしたちと違って、本当にキラキラした女の子だった。今なら「日本国民の妹」というキャッチコピーをつけてあげられるくらいに。

はちがいわく、そんなRちゃんを辱めた奴がいるという。わたしである。

それは、体育の授業中に起こった。授業の内容は卓球。
「毎日を楽しく過ごすこと」が何より大切だった高校生のわたしたちは、当然のように卓球しりとりをやり始めた。
そのなかで毎回お決まりだったのが、わたしからしりとりを始めるときは必ず「ちんこ」と言うこと。
(これをはちがから聞いたときは全く記憶になかったにもかかわらず、否定できる材料がひとつもなかったのですぐに納得した。わたしならやる。多分今でもやる)

問題は、対決相手がRちゃんになったとき。
みんなの憧れのRちゃんが、「ともちゃん、ほんとにやめてー!」と顔を赤らめる。
周囲の友達は、期待を隠しきれない顔で「絶対言うなよ!」と煽る。

当然いつものようにちんこで始まるかと思いきや、どうやらわたしにも良心があったらしい。
ちんこ以外の言葉からしりとり始めた……にもかかわらず、Rちゃんは「こま!」と元気に言いながら良いリターンを返してきたのだ。

まさかのちんこ待ち。あのかわいらしいRちゃんがちんこ待ちをしていたことに周囲は沸きに沸き、結果Rちゃんを辱めることになってしまった。

正直この話を聞いたとき、こんな落語みたいなことが起きたことにも、詳細まではっきりと記憶しているはちがにも驚いた。

Rちゃんに話したい。でもおよそ10年ぶりに会うのにそれはないよな。

最初は話すつもりはなかったけど、お互いの距離が昔のように、むしろ昔よりも近づいたと感じたときにはもう我慢ができずに話してしまった。40近い女が、ちんこという単語を使って、おしゃれなカフェで。

すると、わたしと同じくこの件をすっかり忘れていたRちゃんは、本当に愉快そうにケラケラ笑ってくれた。その相変わらずにかわいい笑顔を見れたのは、ろくでもないことばかり覚えているはちがのお陰だな。時々あいつの記憶とメディアを全消去したくなるけれど、少しは感謝しようかなと思う。

ちなみにRちゃんは卓球事件を覚えてなかったものの、ライター芝田による「※クッキー事件」のことははっきりと覚えていた。

毎日訳もなく楽しかった高校時代を卒業してから、来年度でちょうど20年。

それぞれに記憶が薄れていくなかでも、それぞれが覚えている記憶を集めれば、きっと昔よりももっと笑えるはず。

会いたい人に会って、大声で話して大声で笑える日はそう遠くないと思いたい。

※クッキー事件
芝田が突然学校を半休取ってまで焼いてきたクッキーに関する事件。
クッキーの裏にくっついていた緑や黒の紙の正体を本人に問い詰めると、笑いながら「しっ!」と言った瞬間スカートのホックが飛んだためその場から逃走。後に新聞紙であったことが判明した

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